「わが子の死の真相を知りたい」と声を上げた遺族が、そのまま一家ごと姿を消す──。いま中国で、そんな信じ難い事件が相次いでいる。
最近、中国SNSでは江蘇省連雲港(れんうんこう)市に住む張強(ちょう・きょう)さん一家4人の行方を全国で捜す動きが広がっている。
きっかけは2023年末、張さんの息子である当時学生の張新偉(ちょう・しんい)くんが河川で遺体となって発見された事件だ。息子の不審死に関する真相と関係者への処罰を求めて張強さんはSNS通じて世論に訴え、助けを乞うていたが、2024年1月、見知らぬ人物の訪問を受けた後、張さんを含む家族4人は突如として姿を消した。(消された?)
事件の全容はいまだ明らかになっていないが、「また一家が消されたのか」との声が相次いだ。
そう、「また」である。過去にも、同様の「一家(被)失踪」、失踪に至らなくとも公に声を上げることすらできなくなるほどの脅しや弾圧を受けるケースが少なくない。
わかっているだけでも、例えば山東省では、大学生・李佳隆さんが突然失踪(1月)した後、彼の両親がライブ配信で情報提供を呼びかけたが、その直後、本日に至っても一家は音信不通のままだ。中国メディアもこの件は報道している。
同じく山東省の耿文娟さん一家3人も4月に突然行方不明に。また、大学生・劉東剛さんが失踪したのち、その家族全員が同時に姿を消したという事例もある。
いずれも「家族が声を上げた後に消える」という不気味な共通点を持つ。

こうした背景には、中国当局が反体制的な言論を「安定維持」の名のもとに徹底排除する姿勢がある。
失踪家族の多くは、警察や学校の対応に疑問を持ち、ネット上で助けを求めた者たちだ。だが、声を上げた結果が“家族ごと消される”という事実が、多くの中国人を沈黙に追い込んでいる。今や中国では「声を上げる自由」そのものが命がけとなっているのだ。

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